最近、報道でも注目の浴びることの多い認知症患者の鉄道事故。
最近では、2007年に愛知県で発生した、認知症を抱えていた当時91歳の男性が徘徊時に列車にはねられて死亡した事故の損害賠償を巡る裁判が注目を浴びています。
鉄道事故の中でも、認知症の方が徘徊中に事故に遭ってしまうケースというのは、決して少なくないようです。
国土交通省では、2014年度以降に全国約200の鉄道会社で起きた鉄道事故をまとめており、2014年度に認知症患者が当事者であると確認ができた鉄道事故件数は28件、その内22名が死亡との集計結果が出ました。 また、少なくとも運休が278本、遅延402本が発生しています。
上記の数字は、「認知症である」と国土交通省が把握できた件数であり、国土交通省は「実態はもっと多い可能性がある」としています。
認知症による鉄道事故のケース
認知症を抱えた人が鉄道事故に遭った場合、最も多いのは線路や踏切の中に立ち入ってしまい列車にはねられてしまう、というケースです。
例えば、2014年12月には、車で線路に立ち入って列車と衝突し、列車が脱線するという事故が発生しています。乗客には怪我がなく、当時77歳だった男性も車外にいたため幸いにも無事でした。
この男性は、その後の調査で「重度ではないものの認知症である」と診断されています。
最近では、高齢者による事故が後を絶たないことから、判断力や記憶力といった認知機能が低下した認知症患者は自動車免許の更新が難しくなってきているものの、それでもまだまだこういった認知症患者が車で線路内に立ち入るようなケースは多くあります。このことから、認知症でありながらも車の運転をしている人は相当数いると考えるべきでしょう。
認知症患者による鉄道事故の一例
認知症患者が線路内で自殺
2015年8月24日朝、仙台市青葉区東照宮のJR仙山線の線路上で、近くの福祉施設に入居していた無職男性(当時73歳)が4両編成の回送列車にはねられ死亡しました。
男性は、線路に仰向けに横たわっていたとのことで、仙台北書は男性が自殺を図った可能性があると見て捜査をしたところ、男性が認知症を抱えていたことがわかった。
認知症徘徊による鉄道事故、賠償請求されたものの賠償責任なし
2014年12月18日未明、要介護4の認定を受けていた当時91歳の認知症患者の男性が、徘徊中にJR東海道線の共和駅構内で電車にはねられて死亡しました。
この男性は自宅で介護をしていた妻がまどろんでいた隙に外出をし、徘徊をしていたとのことです。
その後、JR東海は遺族に対して賠償請求、訴訟を行い、世間的にも家族に賠償責任があるかどうかが注目されました。
2016年3月1日最高裁が下した判断は「監督が容易な場合は賠償責任を負うケースがあるが、今回は困難だった」とのことで、家族が賠償責任を負うことはありませんでした。
路線内に停止していた車が衝突、事故後に認知症と判明
6両編成の特急列車が、路線内に停止していた自動車と衝突し、列車の1両目が脱線。幸いにもこの事故による死傷者はいませんでした。
事故発生後、車掌が線路内で70代の男性を発見。男性は長野市内に在住であるということ以外ははっきりとした受け答えが出来ない状態でした。
その後、男性は医師の診断を受け、「重度ではないが認知症である」と診断されました。現在、男性は運転免許証を返納したとのことです。
行方不明の認知症患者、列車にはねられ死亡
2016年3月8日未明の宮城県大崎市 JR東北線、線路内に立ち入っていた男性(当時79歳)が貨物列車にはねられて死亡しました。
警察によれば男性は認知症を抱えており、前日の夜から行方が分からなくなっていたとのことです。
男性は前日に家族と共に外出し、家族が買い物をしている間、車内に残っていたが買い物を終えた家族が車に戻ってきた時には男性の姿はなかった模様。
家族はすぐさま警察に相談し、捜索願を出していたが、翌朝になって行方不明になった店から約20キロほど離れた線路内で電車にはねられ亡くなった。
認知症男性が線路内を車で走行
2015年7月8日夜、大阪市の阪急京都線で愛知県安城市在住の無職男性(当時73歳)が線路内を車で1.3キロ走行したとのことで、電汽車往来危険転覆罪容疑で逮捕された。
男性は「どこから線路内に入ったか覚えていない」「55年前の友達に会いに大阪にやってきた。友達の名前や住所は分からない」などと当初説明をしていたが、後に認知症であったことが判明。
施設が損害賠償請求されることも
認知症を抱えた人が、徘徊行動を取り、介護施設などからいなくなり、その結果鉄道事故が起きてしまった場合、介護施設が損害賠償を請求される場合もあります。
入居中の方が事故を起こした場合、その監督義務は介護施設にあるためです。
最近では、賠償請求されるケースは減っているようですが、それでも可能性が全くなくなるわけではありません。
介護施設は、損害賠償というリスクを少しでも減らすために、入居者の徘徊行動に対して最新の注意が必要です。
介護施設のリスク軽減に
顔認証徘徊防止システムLYKAON
顔認証徘徊防止システムLYKAONは顔認証機能を用いることで、介護施設の入居者が不意に外出してしまうことを防ぐためのシステムです。
GPSタグ等とは異なり、非接触方式であるため、ストレスなく高い徘徊防止率を実現させます。